ロンドンオリンピック サッカー日本代表総括

ロンドンオリンピックが終わって、一息ついたところで、サッカー競技の男女日本代表を振り返ってみたいと思う。
男子日本代表
大会前の期待からすれば、想像以上の成績をあげたU-23日本代表。
ベスト4は、44年ぶりとかいう事は関係なしにすごい事。
この男子サッカー代表が成功したのは、グループリーグ初戦スペイン戦への調整がうまくいった事があるだろう。
そして、戦術がこれまたうまいことにはまった。そのスペインはグループリーグ1分2敗で敗退。
今となってみれば、スペインが大した事がなかったと言われるかもしれないが、優勝候補だった事には間違いないと思う。
元々、スロースターターなスペインと、ピークをスペイン戦にもっていった日本の差は、戦術的な要素がはまった事により日本が1-0という点差以上の勝利に値する内容だった。
ホンジュラス戦、モロッコ戦でも得点を奪えず。得点力不足と日本戦で負けた事が響いた結果だと思う。
もちろん、スペインに油断があったというか、過信があったというのは否めない。そもそも、日本対策らしき事はほとんどしてる様子はなかった。
大会前のメキシコ戦で日本が勝った事を考えても、警戒するべき要素はあったはずだが、日本はメキシコ戦で出せた事以上の事をスペイン戦で出来た。
特に永井をトップに置いたやりかたは、スペイン戦の方がハマった。永井のスピードに戸惑っていたのは誰の目から見ても明らかだった。
だが、この戦術永井を最後まで引っ張ってしまった(というか、それ以外の戦術がなかった!?)のが、ベスト4止まりの要因でもある。
戦術永井がハマったのは、初戦のスペイン戦と、主力を温存しておいたエジプト戦。あの戦術は、コンディションがよくないと、なかなか機能するのが難しいところがある。
グループリーグのモロッコ戦こそ、最後の最後に永井のゴールで逃げ切れたが、準決勝のメキシコ戦、3位決定戦では、永井を含めコンディション的に厳しいなというのがあったと思う。しかも、その永井も怪我をおしての出場で、本来の動きではなかった。
戦術永井一辺倒というのは、関塚監督や選手たちだけのせいにも出来ない。なにしろ、オリンピックに出場したメンバーは、このU-23世代のベストメンバーではないからだ。香川真司も宮市亮もいない、OA枠の1人はGKのバックアップメンバー。実質2人しかOA枠を使えてない。さらに、Jリーグで実績がある選手でも、予選に出場していないメンバーは呼ばれていない。あの戦術をこなすには、ある程度全体の意思の疎通が不可欠。そういう意味では、宇佐美ですら、ハマってなかったというところがある。Jリーグも五輪期間中も中断されずに行われている。
そもそも、JFAはあくまでもU-23世代の大会であり、若手の強化という位置づけなのだろう。絶対にメダルを獲るという体制ではなかった。
海外組も増えてなかなか選手を呼べなかったりという実情もあるし、予選以外での強化試合も組むのも難しく、Jリーグで実績を残してもすぐに呼んでフィット出来るかもわからないので、コンビネーション的には難しい。
JFAが本気でメダルを獲るという体制でのぞんでたら、もう少し違うメンバーだったりしたのでは!?と思う。実際、今回のベスト4入りで、オリンピックでメダルを獲るというのが、どれほどの注目度なのかを改めて実感しただろう。サッカー競技としては、U-23とは言ってみても、普段サッカーをみない人にも注目されるオリンピックでは、そういう事情は一切関係ないのだ。
今回、メダルの期待のかかった準決勝、3位決定戦では不甲斐ない戦いをしてしまった。注目を浴びる中での、あの2戦は情けないものもある。
ベスト4という結果は、今大会の成功ではなるが、それとは別に物足りなさを残してしまった。
協会のサポート云々を別にして、シドニー大会以来の決勝トーナメント進出。メキシコ大会以来のベスト4入りでわかった事もある。
期間が短いオリンピックで6試合を戦い、そしてメダルをとる事の大変さは、経験してみて初めてわかる事。
残念ながら、男子はU-23世代の大会であるため、直接的に選手が次の大会に活かす事は殆ど出来ないが、協会としても日本のサッカー界としても、この経験を次回大会以降に残さなければならない。
なでしこジャパンの銀メダルと男子U-23代表がメダルを取れなかったのは、経験の差というのもあったはずだ。なでしこはW杯で決勝までいっている。トーナメントを勝ち上がるという経験を一度している事で、自分たちのサッカーが出来ない状況でも我慢して勝ち上がる事が出来た。いい意味での勝ちグセというか、トーナメント慣れをしないといけない。
協会としては、オリンピックで6戦戦うというところの経験を次の世代に生かしてもらう事。メダルを本気で狙うなら、今回以上のサポートも必要になるだろう。
なんにせよU-23世代の選手たちがオリンピックベスト4という結果を残したのは大きいこと。最後の2試合の不甲斐ない戦いも、今後のバネになるだろう。
北京五輪3線全敗から、力をつけていった北京世代にも負けないくらいのポテンシャルの大きい選手が数多くいる世代だ。
オリンピック本体会を逃したメンバーにも大きく期待できる。次のW杯で、成長した姿を見せてもらいたい。
女子日本代表
昨年のW杯を優勝し、今大会をメダル候補の一角という位置づけでむかえたなでしこジャパン。
グループリーグの3戦目での南アフリカ戦での引き分け狙いで思わぬ批判を浴びたりと、注目度の高さ故の難しさが多々あった。
そういう中、なかなか自分たちのサッカーが出来ない状況でも、我慢してしたたかに決勝トーナメントを勝ち上がった力強さはすごい事。
元々、粘り強いチームではあったが、W杯以降どうしてもパスを回すチームという事で、守って勝つというのはイメージなかった部分もあった。
実際、敗れたフランスにもブラジルにもケチをつけられている。
昨年のW杯での優勝で注目度が上がった、なでしこジャパンだったが、オリンピックでメダルを獲るというの意味をわかっていたからこそ、なんとしても決勝に進みたかったという事だろう。ここで、メダル無しで終わってしまう事で、ブームはブームで終わってしまい、次に繋げる事が難しくなるという可能性を考えると大きな銀メダルだった。
実際問題、今でもなでしこリーグはなでしこジャパンのメンバーが多く在籍するINAC神戸の試合でこそ観客の入りが多くなっているが、全体的にはまだまだ少ない。代表組がまったくいないチームの対戦では、今でも観客1000人に満たない事もあるのだ。
メダルを獲る事で、さらなる集客、そして女子サッカーを観てもらう事。そして、代表組以外の試合でもある程度の観客が入るようになって、なでしこリーグ自体の底上げをはかるという事に繋げていきたいのだ。
銀メダルという結果を抜きに考えた時に、今大会なでしこらしい試合が出来た試合は少なかった。
一番、なでしこらしい試合が出来たのは、唯一負けたアメリカ戦といってもいいくらいというのはなんとも皮肉な結果だ。
W杯での対戦がなかった、ブラジル、フランスに競り勝っての準優勝という事で、世界のトップレベルのチームではあるという事は証明出来たと思う。
ただ、フランス戦、ブラジル戦では劣勢に立つ時間が長く、なでしこらしいパス回しはすくなかった。
連戦による、フィジカルコンディションを考えればいた仕方ない部分もあるが、苦しい中でもパスを回して主導権を握りながら勝ち取るというところまでいけるかどうかが、今後のなでしこの課題だろう。
フル代表である、なでしこは今大会以降の試合日程が決まっていない。3年後のW杯を目指す中で世代交代も起こるだろうが、今のなでしこのサッカーをどれだけ次世代に引き継げるか!?
代表引退も噂されていた、澤や丸山も、すぐに代表引退という事にはならなそうだが、実力で澤を代表から引退させられる選手が出てくるのか!?一番の注目だろう。
オリンピック直後には、U-20女子W杯が日本で開催される。ヤングなでしこが、どういった戦いを見せてくれるのか!?未来のなでしこは、どれだけこの世代から生まれるのか。楽しみに見守りたい。
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